2026年4月、仙台で開催された講演会で、「難治性慢性鼻副鼻腔炎におけるESSの現在地」というテーマでお話しする機会をいただきました。
今回のテーマは、好酸球性副鼻腔炎をはじめとする難治性の慢性副鼻腔炎に対して、内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を現在どのように位置づけ、手術後の治療につなげていくかというものです。
副鼻腔炎の治療は、この数年で大きく変化しています。
特に好酸球性副鼻腔炎では、単に鼻茸を取り除いたり、副鼻腔を開放したりするだけではなく、嗅覚、気管支喘息との関連、手術後の局所治療、さらにType 2炎症そのものを抑える治療まで含めて考えることが重要になっています。
今回は講演内容の中から、当院が副鼻腔炎の手術を行う際に大切にしている考え方を少しご紹介します。
ESSは「病変を取るだけ」の手術ではありません
内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)では、鼻茸や病変を除去するとともに、副鼻腔の換気や排泄の経路を確保します。
しかし、特に難治性の慢性副鼻腔炎では、「手術できれいにしたら治療終了」ではありません。手術後にも炎症をコントロールしていく必要があるため、ESSではその後の治療まで考えて副鼻腔の形態を整えることが重要です。
ESSは、その後の治療の「土台」をつくる手術
難治性慢性副鼻腔炎の手術で、もう一つ重要なのがDrug Delivery(薬剤を病変部へ届けること)という考え方です。
副鼻腔は鼻腔の奥に存在し、もともとは狭い通路を介して鼻腔とつながっています。炎症や鼻茸によってこの通路が閉塞していると、鼻洗浄や局所ステロイド治療を行っても、治療したい場所まで十分に届かないことがあります。
ESSによって副鼻腔を適切に開放することには、病変を除去するだけでなく、手術後の局所治療を必要な場所まで届けやすくするという意味があります。
そのため、当院ではESSをその後の長期的な治療を成立させるための「土台づくり」でもあると考えています。
手術だけで終わらない、難治性副鼻腔炎の治療
一方、好酸球性副鼻腔炎などType 2炎症を背景とする副鼻腔炎では、ESSによって副鼻腔を十分に開放しても、炎症そのものが完全になくなるわけではありません。
現在では局所ステロイドなどによる治療に加えて、病状によっては生物学的製剤という選択肢も加わっています。
つまり、難治性慢性副鼻腔炎の治療は、「手術か薬か」の二者択一ではありません。
今回の講演の最後には、私が難治性慢性副鼻腔炎の治療で大切だと考えていることをまとめました。
「形態 × 到達 × Type 2制御」
ESSによって副鼻腔の形態を整える。
局所治療が必要な場所まで到達できる環境をつくる。
そして必要に応じて、背景にあるType 2炎症を制御する。
これらを組み合わせることで、症状が落ち着いた状態をできるだけ長く維持することを目指します。講演では、この考え方を「Clinical Remission」という長期的な治療目標につなげてお話ししました。
ESSの「その先」まで考える
副鼻腔炎の手術は、単に悪いところを取り除くためだけのものではありません。
特に難治性慢性副鼻腔炎では、できるだけ一度の手術で、その後の治療を行いやすい鼻・副鼻腔の状態をつくること。そして、手術後も炎症の性質に応じた治療を続けていくことが大切です。
当院では、手術そのものだけではなく、嗅覚、気管支喘息などの併存疾患、術後の局所治療、生物学的製剤による治療まで含めて、長期的な視点から副鼻腔炎の治療を考えています。
今回の仙台での講演は、こうした「ESSの現在地」と、その先の治療について改めて整理し、先生方と共有する機会となりました。