好酸球性副鼻腔炎の手術治療

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― 手術後の治療まで考えた、難治性副鼻腔炎の治療 ―

好酸球性副鼻腔炎は、鼻茸(鼻ポリープ)を伴い、鼻づまりや嗅覚障害を繰り返す難治性の慢性副鼻腔炎です。

一般的な慢性副鼻腔炎とは病態が異なり、手術で鼻茸を取り除いても再発することがあります。そのため、好酸球性副鼻腔炎の手術では、単に「鼻茸を取る」ことだけを目的にするのではなく、副鼻腔を十分に開放し、手術後の鼻洗浄やステロイドなどの局所治療が副鼻腔の奥まで届きやすい状態をつくることが重要です。

好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎とは

好酸球性副鼻腔炎(Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis:ECRS)は、鼻や副鼻腔の粘膜に「好酸球」と呼ばれる炎症細胞が多数集まり、強い炎症を起こす慢性副鼻腔炎です。

両側の鼻に多発する鼻茸、粘り気の強い鼻汁、強い鼻づまりなどを生じますが、特に重要な症状が嗅覚障害です。「以前よりにおいが弱くなった」という程度から、重症になると「まったくにおいが分からない」という状態になることもあります。

また、気管支喘息を合併することが多く、特に成人になってから喘息を発症した方、NSAIDs(解熱鎮痛薬)によって喘息発作などを起こす方では、難治化しやすいことが知られています。

このような場合は好酸球性副鼻腔炎の可能性があります

・鼻茸を指摘されている
・鼻がつまる
・においが分かりにくい、または全く分からない
・粘り気の強い鼻水が出る
・抗生剤による副鼻腔炎の治療を続けても改善しない
・ステロイドを内服すると一時的によくなるが、また悪化する
・気管支喘息を合併している
・過去に副鼻腔炎の手術を受けたが、鼻茸が再発した

好酸球性副鼻腔炎は「手術をすれば治療終了」という病気ではありません

好酸球性副鼻腔炎を理解するうえで最も大切なことは、手術だけで炎症そのものがなくなる病気ではないということです。

鼻茸を切除しても、好酸球を中心とした炎症が続けば再び鼻茸が形成される可能性があります。

そのため、

手術 → 術後の局所治療 → 長期的な炎症のコントロール

までを一つの治療として考える必要があります。

これは「再発するので手術をしても意味がない」ということではありません。

むしろ手術によって閉鎖された副鼻腔を十分に開放することで、鼻洗浄やステロイドなどの局所治療を炎症のある副鼻腔粘膜まで届けやすくすることができます。

好酸球性副鼻腔炎に対するESSは、現在ある病変を取り除くと同時に、その後の治療を行いやすい鼻副鼻腔の環境をつくる手術という側面を持っています。

どのような場合に手術を考えるのでしょうか

好酸球性副鼻腔炎だからといって、すべての患者さんに手術が必要なわけではありません。

鼻洗浄やステロイド点鼻薬などの治療を行っても十分な改善が得られない場合や、鼻茸によって鼻腔・副鼻腔が大きく閉塞している場合などに手術を検討します。

特に、

・鼻茸による鼻づまりが強い
嗅覚障害が続いている
・CTで広範囲の副鼻腔病変を認める
・薬物治療を行っても症状を繰り返す
ステロイド内服を繰り返さなければ症状を維持できない

    といった場合には、内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)が治療選択肢となります。

    手術の必要性や手術範囲は、症状だけで決めるものではありません。鼻内視鏡所見、CT所見、血液中の好酸球、嗅覚障害の程度、気管支喘息などの合併症、これまでの治療経過などを総合的に評価したうえで手術適応を判断することが重要です。

    好酸球性副鼻腔炎に対するESS

    内視鏡下鼻副鼻腔手術(Endoscopic Sinus Surgery:ESS)は、鼻の穴から内視鏡や手術器具を挿入して行う手術です。

    好酸球性副鼻腔炎では鼻茸を切除するだけではなく、病変のある副鼻腔を十分に開放することが重要です。

    副鼻腔には、上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞と呼ばれる複数の空洞があり、それぞれが狭い通路を介して鼻腔につながっています。

    好酸球性副鼻腔炎では特に篩骨洞を中心として広範囲に炎症を生じることが多く、隔壁と呼ばれる薄い骨によって複雑に分かれた副鼻腔内に病変が広がります。

    手術では鼻茸や病的な組織を取り除くとともに、必要に応じて副鼻腔内の隔壁を処理し、それぞれの副鼻腔を鼻腔へ大きく開放します。

    「鼻茸を取る」だけではない手術

    好酸球性副鼻腔炎に対する手術で重要なのは、目の前にある鼻茸だけを切除することではありません。

    副鼻腔が十分に開放されていなければ、手術後に炎症が再燃した際、鼻洗浄やステロイドなどの局所治療を病変部まで十分に届けることが困難になります。

    そのため当院では、現在の病変を取り除くだけでなく、術後に副鼻腔内を観察し、局所治療を継続できる状態をつくることを重視しています。

    嗅覚を考えた手術

    好酸球性副鼻腔炎の患者さんにとって、鼻づまりと並んで大きな問題となるのが嗅覚障害です。

    鼻の上方には「嗅裂」と呼ばれる、においを感じるために重要な領域があります。好酸球性副鼻腔炎ではこの周囲にも鼻茸や強い炎症が生じやすく、においの分子が嗅粘膜まで到達しにくくなるだけでなく、炎症そのものによって嗅覚が障害されることがあります。

    手術によって鼻茸を取り除き、嗅裂周囲の通気を改善することで嗅覚の改善が期待できます。

    ただし、嗅粘膜は大変デリケートであり、手術を行う際にはより精確な操作が必要となる部位です。また、嗅覚障害の程度や期間、嗅粘膜の鼻茸の形状などによっては、手術を行っても十分に嗅覚が回復しない場合があります。

    手術後の治療が非常に重要です

    好酸球性副鼻腔炎では、手術が終了した時点が治療の終了ではありません。

    手術後も炎症をコントロールするため、

    ・生理食塩水による鼻洗浄
    ・ステロイド点鼻薬
    ・内視鏡による副鼻腔内の観察
    ・必要に応じた外来での鼻処置
    ・急性増悪時の
    薬物治療

    などを継続します。

    手術によって副鼻腔が十分に開放されると、術前には閉鎖されていた副鼻腔内を内視鏡で観察しやすくなります。そのため、小さな鼻茸や粘膜の腫脹など再燃の兆候を早期に発見し、局所治療の強化などによって対応できる場合があります。

    再発してから再手術を考えるのではなく、できるだけ再発を大きくしないよう長期的に管理していくことが大切です。

    鼻だけでなく、喘息も一緒に考えます

    好酸球性副鼻腔炎は鼻だけに起こる独立した病気とは限りません。気管支喘息を合併している患者さんが多く、鼻・副鼻腔と気管支の双方にType 2炎症と呼ばれる共通した炎症が存在しています。

    鼻から副鼻腔、咽頭、気管、気管支、肺まで、すべては一続きの「空気の通り道」です。

    そのため好酸球性副鼻腔炎では、鼻の状態だけではなく、喘息の有無やコントロール状態を確認することも重要です。
    喘息の治療薬である吸入ステロイドを口から吸って鼻から出す経鼻呼出法は手術前、手術後の好酸球性副鼻腔炎の治療として有効な治療です。

    喘息のほうが重症なのか、副鼻腔炎のほうが重症なのかといった部分を判断し、吸入薬の種類や量を調整することも必要となります。

    手術後に再発したら? ― 生物学的製剤という選択肢

    好酸球性副鼻腔炎では、適切な手術と術後治療を行っても鼻茸が再発することがあります。特に重症例や気管支喘息を合併している患者さんでは、再発リスクが高くなります。

    従来は、再発した鼻茸に対してステロイド内服や再手術などが行われてきましたが、近年では、従来の治療で十分なコントロールが得られない鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して、炎症に関与する特定の分子を標的とする生物学的製剤による注射治療が行われるようになっています。

    ただ、「手術か、生物学的製剤か」という単純な二者択一ではありません。

    副鼻腔の状態、過去の手術歴、鼻茸の程度、嗅覚障害、喘息の状態、これまで使用してきた薬剤などを総合的に評価し、

    手術・局所治療・薬物治療・生物学的製剤をどのように組み合わせるかを考えることが重要です。

    おぎのクリニック京都駅前での好酸球性副鼻腔炎に対する手術

    当サイト監修のおぎのクリニック京都駅前では、好酸球性副鼻腔炎を含む慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻副鼻腔手術を行っています。

    手術は全身麻酔で行い、日帰りで実施しています。(もしくは連携病院での手術後一泊入院)

    好酸球性副鼻腔炎の手術では、鼻茸を取り除くことだけを目的とせず、「手術後に副鼻腔内を観察でき、局所治療を行いやすい状態をつくること」

    を重視しています。また、好酸球性副鼻腔炎に多い嗅覚障害や気管支喘息、術後再発についても継続して診療し、必要な患者さんには生物学的製剤を含めた治療を検討します。

    難治性の疾患だからこそ、手術だけで治療を完結させるのではなく、手術前の評価から手術、術後管理、再発時の治療まで一貫して行うことを大切にしています。


    よくあるご質問

    Q. 好酸球性副鼻腔炎は手術をすれば治りますか?

    好酸球性副鼻腔炎は、手術によって炎症そのものが完全になくなる疾患ではありません。手術後も鼻茸が再発する可能性があるため、鼻洗浄やステロイド点鼻薬などによる継続的な管理が必要です。

    一方で、手術によって鼻茸を除去して副鼻腔を十分に開放することで、症状の改善だけでなく、その後の局所治療を行いやすい環境をつくることができます。
    手術の目標は好酸球性副鼻腔炎の確定診断を行い、次のステップの治療につなげていくこと、日頃のケアを行いやすい環境をつくることにあります。

    Q. 手術をすると、においは戻りますか?

    鼻茸などによってにおいの通り道が閉塞している場合には、手術によって嗅覚が改善する可能性があります。

    ただし、嗅覚障害が長期間続いている場合や嗅粘膜自体の炎症が強い場合など、十分に改善しないこともあります。術後も炎症をコントロールすることが重要です。

    Q. 手術後にまた鼻茸ができることはありますか?

    あります。好酸球性副鼻腔炎は一般的な慢性副鼻腔炎と比較して再発しやすい疾患です。

    そのため当院では、術後も定期的に内視鏡で副鼻腔内を確認し、再燃の兆候があれば早期に治療を行います。

    Q. デュピクセントなどの注射をすれば、手術は必要ありませんか?

    デュピクセントなどの生物学的製剤は「手術を行っても鼻茸が再発し嗅覚障害や鼻づまりが続いていること」が保険診療において必要な条件とされています。そのため、年齢、合併症などにより手術ができない場合を除いてまずは手術が必要となります。以前に手術をうけられた場合であっても、副鼻腔の仕切りの壁(隔壁)が残っている方、好酸球性副鼻腔炎の指定難病を取得できていない方などは生物学的製剤の治療前に手術をすすめることもあります。

    「手術か注射か」ではなく、それぞれの患者さんの病態や治療歴を踏まえて治療方針を決めます。

    Q. 喘息がありますが、手術できますか?

    喘息を合併している好酸球性副鼻腔炎の患者さんは少なくありません。安全に全身麻酔・手術を行うためには喘息の状態を事前に評価し、しっかりと喘息がコントロールされて安定した状態であれば手術は可能です。最近症状が安定していることで吸入薬を使われていない場合でも手術前は必ず吸入薬治療を毎日していただくことを手術を行う条件としています。


    好酸球性副鼻腔炎の手術を検討されている方へ

    好酸球性副鼻腔炎は、一般的な慢性副鼻腔炎とは異なり、手術後も長期的な治療が必要となる疾患です。

    そのため、「手術をするかどうか」だけではなく、

    どのような手術を行い、その後どのように炎症をコントロールしていくか

    まで考えて治療方針を決めることが大切です。

    • 好酸球性副鼻腔炎と診断された
    • 副鼻腔炎の手術を勧められている
    • 鼻茸を繰り返している
    • 嗅覚がなかなか戻らない
    • 過去に手術を受けたが再発した
    • 手術と生物学的製剤のどちらがよいか相談したい

    このような方は、おぎのクリニック京都駅前 鼻閉・副鼻腔炎手術相談外来でご相談ください。

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