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副鼻腔炎について
副鼻腔炎は、頬やおでこの奥、目と目の間にある空洞(副鼻腔)に起こる炎症性疾患です。副鼻腔は本来、体内に備わった「加湿機能付き空気清浄機」の役割を果たしていますが、炎症によりその機能が損なわれます。
副鼻腔炎は、頬やおでこの奥、目と目の間にある空洞(副鼻腔)に発生する炎症性疾患です。副鼻腔は本来、体内に備わった「加湿機能付き空気清浄機」の役割を果たしていますが、ウイルス、細菌、アレルギーなどにより炎症が起こり、副鼻腔の粘膜が腫れ上がることで空気の流れが阻害されます。その結果、副鼻腔内に膿や鼻茸(ポリープ)が蓄積し、鼻水、鼻づまり、頭痛、顔面の圧迫感などの不快な症状が現れます。
副鼻腔炎は、その経過によって急性と慢性に分類されます。症状が1ヶ月以内に改善するものを「急性副鼻腔炎」、3ヶ月以上持続するものを「慢性副鼻腔炎」と言います。慢性副鼻腔炎にはさらに細かな分類があり、鼻茸の有無や上顎洞への膿の貯留(従来『蓄膿』と呼ばれていた状態)、喘息との合併が多い「好酸球性副鼻腔炎」などが含まれます。
近年、アレルギーが関与する「好酸球性副鼻腔炎」の患者数が世界的に増加傾向にあり、注目を集めています。この疾患は従来の治療に抵抗性を示すことが多く、新たな治療アプローチが求められています。
副鼻腔炎の種類
急性副鼻腔炎
約1ヶ月以内に改善する炎症で、多くは風邪などがきっかけで発症します。
慢性副鼻腔炎
3ヶ月以上症状が持続する炎症で、日本には約200万人の患者がいるとされています。
好酸球性副鼻腔炎
アレルギー体質の方に多く見られ、難治性の慢性副鼻腔炎の一種です。近年、罹患者数が世界的に増加しています。
副鼻腔炎の主な原因
- ウイルスや細菌の感染
- アレルギー反応
- 解剖学的要因(鼻中隔弯曲症など)
- 環境因子(大気汚染、タバコなど)
など
副鼻腔炎の症状
主な症状には以下のようなものがあります。
- 鼻づまり(特に慢性的なもの)
- 粘稠な鼻汁
- 後鼻漏(喉に鼻水が流れる感覚)
- 頭痛や顔面の圧迫感
- 嗅覚障害(特に好酸球性副鼻腔炎で顕著)
- 咳や喉の違和感
- 睡眠障害やいびき
など
副鼻腔炎を診断するために
副鼻腔炎の正確な診断と適切な治療方針の決定のため、以下の検査を行います。
鼻腔内視鏡検査
柔軟なファイバースコープを用いて鼻腔内を詳細に観察し、膿性鼻汁や鼻茸(ポリープ)の有無を確認します。
CT検査
コーンビームCTを用いて副鼻腔の状態を撮影し、粘膜の腫れや膿の貯留を評価します。内視鏡では見えない深部の状態も確認できます。
血液検査
血中の好酸球比率やアレルギーの有無を確認し、副鼻腔炎のタイプを診断します。
嗅覚検査
基準嗅覚検査(T&Tオルファクトメトリー)や静脈性嗅覚検査を行い、嗅覚障害の程度を評価します。特に好酸球性副鼻腔炎の診断に重要です。
鼻腔通気度検査
左右の鼻の空気抵抗を測定し、鼻づまりの程度を客観的に評価します。手術前後の比較にも有用です。
組織生検
必要に応じて鼻茸の一部を切除し、好酸球浸潤の程度を確認します。好酸球性副鼻腔炎の診断に重要です。
呼吸機能検査
喘息合併の可能性がある場合、スパイロメトリーや呼気一酸化窒素濃度測定を行います。
副鼻腔炎を治療するには
保存的治療
鼻洗浄(鼻うがい)
0.9~1.5%の食塩水を用いた鼻洗浄は、副鼻腔炎治療の基本です。41℃前後のお湯を使用し、鼻内の膿性鼻汁の排出を促します。
薬物療法
- 鼻噴霧ステロイド薬:ヨーロッパ鼻科学会のガイドラインで第一選択治療として推奨されています
- 抗菌薬:急性副鼻腔炎では短期間、慢性副鼻腔炎では長期間の低用量投与を行います
- 全身性ステロイド:症状急性増悪時に短期間使用します
- マクロライド系抗生物質:慢性副鼻腔炎の場合、通常の半分の量で3ヶ月程度の長期投与を行うことがあります
など
吸入ステロイド経鼻呼出法
喘息を合併している場合、喘息用吸入ステロイドを鼻から呼出する方法を指導します。
生物学的製剤
手術後再発例や高齢者など、手術が困難な場合の選択肢として考慮します。
手術療法
内視鏡下副鼻腔手術(ESS)が一般的で、以下の目的で行われます。
- 鼻茸(ポリープ)の切除
- 病的粘膜の除去
- 副鼻腔の開放による換気改善
- 膿の排出促進
など
手術後は、内服薬や点鼻薬の使用、定期的な鼻洗浄、通院による処置が必要です。
好酸球性副鼻腔炎について
好酸球性副鼻腔炎は、主にアレルギー体質の方に見られる特殊な副鼻腔炎の一種です。この疾患では、アレルギー反応に関与する「好酸球」という白血球が、血中や副鼻腔の粘膜下に多く集積し、慢性的な炎症を引き起こします。
好酸球性副鼻腔炎の主な特徴
- 両側性の鼻茸(ポリープ)形成
- 粘稠度の高い鼻汁
- 嗅覚障害の高頻度発症
- 喘息との合併が多い
- 従来の治療への抵抗性
など
好酸球性副鼻腔炎の主な原因
好酸球性副鼻腔炎の主な原因は、アレルギー体質に関連していると考えられています。アレルゲンや環境因子が免疫システムを過剰に刺激することで、以下のような反応が起こります。
- 好酸球の活性化と増加
- フィブリン(糊状物質)の産生による鼻茸の形成
- ムチン(粘稠な分泌物)の産生
など
好酸球性副鼻腔炎は難病に指定されています
好酸球性副鼻腔炎は厚生労働省指定の難病です。認定条件は以下の通りです。
- 過去に副鼻腔炎関連の手術歴があること
- 症状の重症度が中等症以上であること
- 組織中の好酸球浸潤数が基準値以上であること
認定を受けると医療費の助成を受けられる可能性があります。
好酸球性副鼻腔炎の症状
主な症状には以下のようなものがあります。
- 長期にわたる鼻づまりや鼻水
- 嗅覚障害(においがわからない、薄れる)
- 頭痛や顔面の痛み
- 後鼻漏(喉に鼻水が流れる感覚)
- 鼻声や耳の詰まり感
- 睡眠障害やいびき
- 長引く咳や喉の違和感
など
特に嗅覚障害は特徴的な症状で、嗅裂(嗅粘膜が分布する部位)の炎症や鼻茸(ポリープ)の形成により、重症例ではまったく匂いがわからなくなることもあります。
好酸球性副鼻腔炎を診断するために
診断は複数の検査を組み合わせて行われます。
CT検査
副鼻腔の状態を詳細に評価し、特に篩骨洞を含む副鼻腔の炎症の程度を確認します。
鼻腔ファイバースコープ検査
鼻腔内の状態を直接観察し、鼻茸(ポリープ)の有無や程度を評価します。
血液検査
血中の好酸球数や比率を測定し、アレルギー反応の兆候を調べます。
病理組織検査
手術で得られた鼻茸組織中の好酸球数を確認します。高倍率視野で平均70個以上の好酸球浸潤があれば、好酸球性副鼻腔炎と診断されます。
好酸球性副鼻腔炎を治療するには
保存的治療
ステロイド点鼻薬
炎症を抑制し、症状の緩和に効果があります。
鼻洗浄(鼻うがい)
41℃程度のお湯に食塩(0.9~1%濃度)を混ぜて行います。副鼻腔内の粘膜を清潔に保ち、炎症を抑制します。
吸入ステロイド経鼻呼出法
喘息を合併している場合、喘息用吸入ステロイドを鼻から呼出する方法を指導します。
経口ステロイド薬
症状が強い場合に短期間使用することがあります。長期使用には副作用のリスクがあるため、慎重な管理が必要です。
手術療法
保存的治療で改善が見られない場合、手術を検討します。
- 鼻茸(ポリープ)の除去
- 副鼻腔の自然孔の拡大
- 副鼻腔内の隔壁(骨壁)の切除
など
手術により副鼻腔の換気が改善され、症状が軽減されます。ただし、再発のリスクが高いため、術後の継続的なケアが重要です。
生物学的製剤
再発を繰り返す症例や手術が困難な場合、皮下注射による生物学的製剤治療を検討することがあります。
術後の経過と注意点
- 術後1ヶ月間は週1回程度の通院が必要です
- その後、1~3ヶ月ごとの定期通院を推奨しています
- 最低1年間の定期的な通院が重要です
- 喘息合併例では、喘息治療も含めた継続的な管理が必要です
- 嗅覚の変化、鼻閉、頭痛などの症状悪化時は速やかに受診してください
など
好酸球性副鼻腔炎の治療は長期的な管理が必要です。当クリニックでは、患者様お一人おひとりの状態に合わせた治療計画を立て、きめ細やかなケアと定期的なフォローアップを行っています。
鼻洗浄(鼻うがい)の重要性
鼻洗浄(鼻うがい)は、好酸球性副鼻腔炎の治療において非常に重要な役割を果たします。以下にその理由と重要性をご説明します。
粘稠な分泌物の除去
好酸球性副鼻腔炎の患者様は、好酸球が産生する非常に粘稠なムチン(粘液)を分泌します。この粘稠な分泌物が副鼻腔内に溜まると、新たな炎症や組織の癒着、鼻茸の増大などを引き起こす可能性があります。鼻うがいはこうした分泌物を物理的に洗い流すことで、これらの問題を予防します。
自然な洗浄機能の補完
副鼻腔炎の患者様は、元々副鼻腔を自然に洗浄する能力が弱い傾向にあります。そのため、定期的な鼻うがいによってこの機能を補完することが重要です。
継続的なケアの必要性
好酸球性副鼻腔炎は、手術後も再発のリスクが高い疾患です。そのため歯磨きと虫歯予防の関係と同様に、たとえ症状が改善しても継続的な鼻うがいを行うことが重要です。これにより再発のリスクを低減し、長期的な症状管理が可能となります。
術前からの準備
鼻うがいは手術後だけでなく、手術前から開始することが推奨されます。これにより患者様が適切な鼻洗浄(鼻うがい)の方法に慣れ、術後のケアをスムーズに行えるようになります。
長期的な管理の一環
好酸球性副鼻腔炎の治療は手術だけでなく、長期的な管理が必要です。鼻うがいは、その管理計画の重要な一部となります。
鼻洗浄(鼻うがい)の流れ
鼻洗浄(鼻うがい)は、以下の手順で行います。正しい方法で実施することで、より効果的に副鼻腔を洗浄できます。
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準備
- 専用のボトルに41°C程度のお湯を250ml入れます
- 生理食塩水の素(または食塩2.5g)をボトルに加えます
- キャップを閉め、軽く振って溶かします
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洗浄
- 片方の鼻孔にノズルを軽く当てます
- ボトルを優しく握り、洗浄液を鼻腔内に流し込みます
- もう片方の鼻孔からお湯が出てくるのを確認します
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反対側の洗浄
- 同じ手順で反対側の鼻孔も洗浄します
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頻度
- 基本的に1日2回、洗浄してください
- 術後や症状が悪化している時は、1日3~5回に増やすことをおすすめします
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注意点
- 鼻腔内を優しく「ゆすぐ」「温める」感覚で行ってください
- 洗浄後は、軽く鼻をかんで残った水分を出します
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メンテナンス
- 使用後はボトルを良く洗い、乾燥させてください
- 定期的にボトルの消毒を行ってください
おぎのクリニック京都駅前の「鼻の治療」